保護者の気持ち

保護者の気持ちという点では理解はできないと感じています。

理解できないから理解しないという意味ではないということを先に念押ししておきます。

 

就労移行にいた時の話。

ある社内イベントがあり、事例紹介という立場を与えられました。

療育手帳B2の彼は自閉症スペクトラムと診断されており、独特の口調が印象的でした。

その彼がある中堅の部品メーカーに就職。安定した出席と堅実な仕事ぶりで採用企業からも評価されていました。

その上で、保護者、企業採用担当、支援者(私)が登壇し、訓練、企業実習、面接活動、採用後などを振り返りながら、対談する企画を上長から任せられました。

 

その打ち合わせとして、保護者に事業所にお越し頂き、就職〜定着した現在をお母様はどの様に感じ取られているか。私がうかがったところ、困った様な表情で笑みを浮かべながら、

「正直、今の彼が本当に楽しいのか、幸せなのか、私にもわからないんです。・・・彼は、語彙も少なく、表現も流暢とは言えません。自分の気持ちを言葉で表現できると言っても、限られた言葉で、それで気持ち全てを表しているかと言われると、親の私でもそうではない。と言い切れます。彼として、例えばB型(就労継続支援B型)で働くことの方が楽しかったかもしれない・・・そう考えると、果たしてそこに導いた自分は正しかったのかな?。と時折思うんです。」と答えられました。

私は愕然としました。

良い企業に・・・合理的配慮を真剣に考えていただき、給与も一般の方とそれほど遜色かわらない待遇にも関わらず・・・就職したのに。と正直感じました。

 

でも、この言葉はすごく大きかったです。

そうだ。これが、その人にとって最大の支援者。

肉親だからこその意見だと、感じ取るにそう時間はかかりませんでした。

 

就職、経済的自立・・・それだけが人生ではないのです。

その人の生き方は無限大。その人にとって、周囲の環境をある程度コントロールできる保護者だからこその創造できる答えだと気づかされました。

障害児だからこそ、様々なしんどいこともご経験され、その渦中では様々な思いを巡らされてきたでしょう。それは私には経験できません。

だからこそ、この事例のように保護者の回答に驚愕したのだと思います。

 

保護者に対して、今の私に何ができるのか。

少なくとも、同情めいた浅はかな賞賛ではなく、でも保護者に吾子の成長と可能性を実感できる姿をプレゼンテーションすること。

今はそこを見ていただけるように創意工夫し、専門職を装って保護者やその児にレールを敷かないよう、肝に命じていきたいものです。